Home SPECIAL 個性ドリブン#2_1[TERAS company]- SHIMOTSUKARE YANKEE コラボ企画 –

個性ドリブン#2_1[TERAS company]- SHIMOTSUKARE YANKEE コラボ企画 –

by クロ

しもつかれにインスパイアされたアパレルブランド「SHIMOTSUKARE YANKEE(シモツカレヤンキー)」。
コンセプトは「しもつかれの様な独特なクセがある事をネガティブと捉えられてしまう風潮に対し、クセが強いことを『個性』と定義し、『そこにある個性を応援する」。
「個性ドリブン」は、シモツカレヤンキーのブランドプロデューサーであり、栃木市のブランディングデザイナー、しもつかれブランド会議(SBM)代表の青栁徹氏が、「個性を武器に生き抜こうとする人たち」を紹介していきます。
第2回目は、同ブランド初のコラボレーション商品、黒地に鬼おろし柄の刺しゅうを施した「Onioroshi Mask」を手掛けたA型事業所「TERAS company(テラスカンパニー)」商品企画・営業担当の山中知博さんです。伝統ある「刺し子」を現代風にアレンジしたアクセサリーやタペストリーなどは海外でも注目。「福祉×アート」で新しい就労支援のカタチを切り拓く想いを聴きました。

宇都宮市東宝木町にある「TERAS company」は、キャンドルアーティストと福祉従事者、障がい者という異業種3人が2015年設立した合同会社「TOMOS company」内のA型事業所*として2017年に設立。就労支援の未来を照らしたいとブランド名に「TERAS」と冠した。オリジナルの刺し子製品の製作・販売をはじめ、他ブランドとのコラボレーションや他メーカーの受託作業も行っている。
主にキャンドルを製作する就労継続支援B型事業所「TOMOS company」(松原店、上大曽店)と共に、「障害者の居場所となり、社会との接点をつくり、仕事を生み出していきたい」「製品で、人々の心を豊かにし、生産者である障害者の生活も豊かにしていきたい」と障害者の自立、就労支援を行っている。

*障害や難病のある方が、雇用契約を結び一定の支援を受け働くことができる福祉サービス。

アイデア次第 福祉は「楽しい」

 

山中知博(以下、山) テラスカンパニーは、主に3つのラインでやっているイメージですね。刺し子の伝統を重んじた柄と、染め物を使ったカラフルな柄を施したそれぞれアクセサリーや小物など。「襤褸(ぼろ)」と言われる日本の古い藍染めの生地(襤褸藍)に刺し子を入れパッチワークで服やタペストリーを制作する「BORO」シリーズ。

青(以下、青) (BOROのコートを見ながら)カッコイイですね。いわゆる一点物ですよね。

山 そうですね。今、こういう色合いに染めようと思うとコストがすごく高いんですけど、古い布をつなげれば安く抑えられる。こういうボロボロ感は狙って作れない。時間の経過の中で生まれた味と格好良さですよね。

青 ナチュラルな劣化がミックスされると面白いですね。しもつかれも「もったいない精神」で売ってるんで、なんか通ずるところありますよね。

山 僕たちの活動はだいたいご存知ですか。
青 はい。いろいろ展開されてますよね。

山 キャンドルがうちのロゴなんですけど、代表が元々キャンドルアーティストだったんです。

青 へええ。

山 「未来に明かりを灯す」っていう意味でトモスカンパニーに。で、キャンドルの製作から始まったんです。今は、いろいろコラボレーションもさせていただいていて、フィンランドのアウトドア用品の高級ブランド「nordisk」、日光市の旅館「日光星の宿」、真岡木綿など。沖縄の人とも。

青 すごいですね、コラボが。

山 お話をいただくことが多くて。
毎年、カンパニーの「周年パーティー」というのもやっています。今年はコロナ禍で開催できないのですが、駅近くのフダンカフェさんを1日貸し切って音楽ライブ、施設発表とかやっていました。
「自社通貨」というのもやっています。

青 聞いたことあります。

山 (始まったのは)B型の方で2年くらい前ですかね。B型は雇用契約ではないので、事業所の事業の売り上げをみんなで分配するっていう感じですね。給料を「工賃」と呼び平均で月1万円いかないくらい。そうすると自立支援や「みんなのふところを豊かにしたい」という目標が実現できてないよねってなったんです。
工賃を上げられれば良いんですけど、就労支援という事業運営と福祉サービスは2本立て。工賃上げようと事業運営に偏ってしまうと福祉サービスがおろそかになってしまう。通所率が悪くなるとかそこの充実が減ってしまう。そこで、通所する毎に自社通貨「トモス通貨」を発行することにしたんです。
通貨は施設内のジュースや食べ物と交換でき、週1回の料理を作ったり、外から弁当をとるレクリエーションの時も通貨を使えます。フダンカフェでも通貨で食事をしたり、お誕生日にケーキを買ってプレゼントするっていう動きもあります。そういったのを楽しみにみんな頑張ってますね

青 面白い。

山 農園も始めて、その野菜も分け合っています。「楽しさ」には力を入れてます。楽しくないと仕事が嫌になっちゃうじゃないですか。

青 そうですよね。

山 他で働いていて精神的に障害が生じて、働くことにネガティブな感情を持っている人もいる。A型、B型の事業所は、障害を持った人が働く選択肢の一つでその先に一般就労がある。一つの訓練の場。A型から一般に行く人がうちでも年に2、3人ぐらいいます。そうなった時に、就労支援って福祉従事者がサポートしてくれるのですごく働きやすい。それが「何でも良いよ」ってなってしまうと一般に行った時に苦労してしまう。だから、その人に合わせた支援をして「仕事は楽しい」という感覚をつかんで、ここを出た時に生かしてもらいたいんです。

青 すごいな。大変そうだけど楽しそうですね。新しいことにどんどんチャレンジして。

山 楽しいですね。わりと福祉の世界ってアイデア次第でいろいろできますね。かなりクリエイティブなことができるなって。

青 めちゃめちゃクリエイティブですもんね。こんなクリエイティブな施設は見たことないな。

山 職員に福祉経験者もたくさんいるけど、福祉をやっていなかった人も半々ぐらいでいます。だから違う視点でいろんなアイデアが出るですよね。

青 そういうの大事ですよね。

山 福祉サービスと事業運営のバランスをとりながら、みんなが楽しく仕事してくれて、出勤率が良いってことは良い方向に向かっているのかなって。

個性が光れば作品は輝く

 

青 「SHIMOTSUKARE YANKEE」は「個性を応援する」というテーマがあって普通のアパレルをやりたい訳ではない。その先、「しもつかれがどう変わって見えるか」がすごく大事なんです。栃木にしかない個性。しもつかれを個性と捉えると、また全然違う見え方がするなって。他のブランドを見てもしっかりと世界観を持ったアパレルってあんまりない。そこに敢えてローカル感をぶっこんでいきたい。「ヤンキー」も結局ローカルだし個性強いじゃないですか。キャッチーで面白いなとネーミングしたところから始まったんです。
障がいも「個性」と捉えて、今までネガティブだと思っていた部分が、ポジティブに見えるような切り取り方をしていきたい。コラボもブランド同士で共感し合って、相乗効果でお互いが良く見える感じにしたいんですよね。
トモスさんのいろんなチャレンジを含めてブランドの「個性」、他との違いって何ですか。

山 意識していることは、伝統の中である程度型が決まった「刺し子」の中でどう表現するか。元になる部分をしっかり学んだ上で僕たちなりの色でどう表現するかを考えてます。それを探っていくと刺し子は、実はあまり決まりがなくて自由度がすごく高いんです。
始まりは、明治・大正くらい。福島県以北は綿が採れなくてすごく貴重。その代わりに麻の布を使っていたらしいんです。麻は目が粗い。その隙間を埋めるためや靴下の補正などのために刺し子をしていた。綿がないから綿(わた)も無いわけですよ。麻のはんてんを何枚も重ねて刺し子していったのが布団になったというルーツもあります。新潟がすごく盛んですね。

青 そうですよね。

山 おしゃれの一つ、和柄模様の登場はもっと後。そういったところを勉強していって「幾何学模様、良いね」と今推してます。色合いも普段から身に着けてもらえるようなポップな感じに。日常に入り込めるようなデザインを意識してますね。
伝統を重んじながら今の暮らしにフィットする刺し子を模索してます。

青 伝統を重んじながらも現代の美的感覚にも合わせ、より身近に感じてほしいということですよね。

山 利用者さんが3施設で約50人。その数だけアイデアが出てくる。モノづくりは、経験や知識が積み重なっていくと「こういうことやりたい」とか自発性も出て、すごく良いデザインが生まれてきたりする。個性はすごく必要で、これ(キルトのタペストリー)は個性の集合体ですよね。

青 なるほどー。

山 だから職員は利用者がどういうことが得意で苦手とかを日々見て理解して、その人に合わせた見方をしていく。「見出していく」感じですかね。

青 デザイン的なところですか。

山 デザインもそうですね。商品を買ってくださる方の8割くらいが女性なんですけど、僕は男なんで(笑)、女性目線でパーツから選んでもらってます。アイデア出しで困った時は相談しに来てくれたり。

青 本当に自由に考えてもらっているんですね。

ト 自由が得意な人には自由にやってもらっているし、自由が不安で決めたものがあった方がいい人は同じ作業をやってもらう。1人が一つというより、みんなで一つ。みんなで分業的な感じですね。

青 この形になったのは、やっていく中で、ですか。

山 今年で丸5年、僕が入って丸4年。入った時はB型1カ所しかなかったんで施設内でやりたい事をやって、出来上がったものを市役所の販売スペースで販売するという形だった。その販売する様子を見に行った時に「統一感がない」「何を売りたいか分からない」「手間が掛かっているのに価格が安い」「パッケージングも良くなかった」。そういった点に一個一個手を入れていって整えていったんです。そこから僕が刺し子を個人的に好きで「やってみよう」と。

青 他の事業所はこういう展開はあまりしていないですよね。

山 全国的に見ると面白い施設はあるんですけど、そんなに多くはないと思います。会社の母体が大きくない、社会福祉法人とかではないこのサイズ感だからできることもあるのかなと。大きい組織はトップダウンで重要なことが下りてこないとかを結構聞きますが、うちはその辺がすごく風通し良い。だから、立場に関係なく、良いアイデアが出てくるのかなと思います。

青 最初のスタートが「福祉やろう」ではなかったですもんね。スタートから他の施設と少し違いますよね。

山 そうですね。施設の造りも「おしゃれな雰囲気で」「こうだったら面白い」っていう僕ら独自の視点ですよね。殺風景な雰囲気の所と明るくて音楽が流れている所では違いが出てきますよね。多分そういう視点すらない施設も多い。
僕らは違う角度を多く持っていて、行政管理下の中でも「あ、こんなことできるじゃん」っていうことを見つけてやっています。

障がいも個性

 

青 「障がい」を個性として捉えると、どんな個性が見えてきますか。

山 自閉症系やアスペルガー系などは、こだわりが強いという傾向もあるんですよね。

青 そのこだわりの強さがプラスに働いている感じは。

山 なるべくプラスに動くように支援しています。こだわりを聴きつつ、提案をしていきます。「こういうやり方だとスピードが少し早くなるかもしれない。一緒にやってみようか」と。こだわりの方向性をちょっと変えてあげる。

青 方向性ね。

山 こだわることが悪いわけではなくて、視点を少し変えてあげるとそのこだわりをポジティブな方に転換することができるんです。

青 その舵取りが大変な時があるかもしれないけれど、否定するのではなく「一緒に」と。

山 そうですね。「個性をどう生かしてあげるか」が職員の仕事だと思うんです。仕事の概念って実はあまりない気がしていて、それが仕事として成り立っていればOKじゃないですか。

青 寄り添いながらも、個性を壊さないようにしている。

山 そうですね。一人一人ちゃんと見て、向き合っていく。それぞれに障がい名が付いていますけど、同じ障がいでも人によって全然違う。一人一人をちゃんと理解し、最終的な責任は職員が取ります。

青 責任っていうのはどういう。

山 作ったものが製品から外れたりとか、提案した作業ができなかったとかしても責めない。「もう少し工夫できなかったかな」って必ず職員側で考えるようにしています。

青 個性をポジティブに最大化するために心掛けているアプローチの仕方はありますか。

山 「できない」と考えない。アイデアがあるんだったらそれを皆で共有して意見を出し合う。長期、短期あるけど諦めないようにすることですね。

青 諦めないようにする意味って何ですか。

山 一個一個区切りをつけて小さいアイデアをカタチにしていくことがその先につながる。そうすると可能性が広がっていくのかなと。

青 ある程度形が見えてくると次はこうしようってなりますもんね。

山 大きな目標に向かって小さい部分をどんどん詰めていくような感じですね。ちょっと難しそうだったらその前の段階で一回カタチを作れるように設定して、それを見た上で「ここを修正した方がいいよね」っていうのを重ねていった方が良いと思うんです。
マニュアルも日々作り変えることは基本。タグもデザインも気になったところはブラッシュアップしていく感じですね。

青 小さい改善を繰り返す。日々アップデートしていく感じですね。

山 質が良いものを作っていきたいんです。「障がい者が作っているから買おう」っていうのではなく、「モノがすごく良い」があって、「あ、障がい者が作っているんだね」っていう流れにしたいんです。そういう「ブランド力」をもっと付けていきたいなって。

青 そうなんですよね。応援経済っていつか終わっちゃうもんなんですよね。ちゃんとモノとしてほしいっていう欲求までたどりつくものじゃないと継続が難しいですよね。

山 継続が大切だと思っています。この事業が続かないと、ここの職場がなくなったら50人近くの利用者の働く場所が無くなってしまう。そのため、一過性ではなく継続していけるような事業展開をしていく。ブランド力がついて、認知度が増せば、施設としても安定感がより出てくる。

青 他の施設に通っていた方がここに来て変わったと言われることはありますか。

山 コミュニケーションがよりとれるようになったとか、あとは「楽しい」ってみんな言ってくれますね。仕事もそうだし、利用者さん同士のコミュニケーションも楽しみに来てくれています。
後は、「他では否定される事が多かった」と言います。受け入れる側のキャパシティの問題なのかなと。子育てと近いところもあるかもしれないですね。子どもとして接するのと、一人の人間として接するのとでは違いますよね。自分を認め、受け入れてもらっているという感覚が強くなれば信頼関係が生まれてくる。それでいろんな相談ができたり、家庭環境も良くなったり、家族との付き合い方も少し変わったとかも。

青 めちゃめちゃ良いところじゃないですか。素晴らしい。

山 やりがいがありますね。

個性ドリブン#2_1[山中知博 / TERAS company]

第2回へつづく

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1 コメント

個性ドリブン#2_2[TERAS company]- SHIMOTSUKARE YANKEE コラボ企画 – | 千年ノ美 2020年8月16日 - 10:26 AM

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